脳は毎日情報を取り入れたり、判断したり運動の命令を下します。その情報を伝えているのが神経細胞です。そのたくさんの神経細胞が自分の意思に反して一斉に活動し、さまざまな症状が繰り返し起こる病気をてんかんと言います。
発作は様々な種類がありますが一般的に数分以内で終わり通常に戻ります。
てんかんは身近な病気の一つで、100人に1人の発病率とも言われています。
従来は15歳以下のこどもの病気と考えがちですが60歳以上で発病率が多いことが分かってきました。その為、認知症や老化と混同されることもしばしばあります。高齢社会の日本では高齢の方々のてんかんにも注目する必要があります。
原因が明らかな人は全体の3分の1程度でその他は分かっていません。主な原因はけがや脳炎、脳血管障害、先天性の脳奇形などがあります。乳児期では先天性の病気であったり、高齢者では脳梗塞やくも膜下出血の後遺症である場合があります。比較的若い方は原因が分かっていません。
遺伝が原因とも思われがちですがそれはごく一部で、家族内での発病があったとしても単なる偶然で、遺伝とは限りません。またストレスが原因とも考えがちですが基本的に関係性はありません。
発作がいつ起こるのかは予想ができないことが多く、人によってはストレスや興奮した時、運動時、まれに光や音の刺激、驚いた時、身体を触られた時などがあります。女性の場合、月経前や月経中、排卵の時期に発作が増加する場合があります。
また、ホッとした時に起こりやすいてんかんのタイプもあります。
しかし発作が起こる度にその理由を考えすぎると生活ができなくなってしまいます。一般的に発作が起きやすいと言われている睡眠不足、過度の疲労・飲酒などは避け、できるだけ普通に生活するよう心がけましょう。
てんかん発作は2つに分けられます。
種類 | 症状 | |
---|---|---|
部分発作 | 脳のある部分から始まる | 例えば… 運動神経から始まるものは体の一部がピクピクするようなけいれんが起こる 意識をなくし、その場にふさわしくない動きを起こす |
全般発作 | 脳全体が過剰に放電される |
●欠神発作(数秒で回復) |
発作が月に1回以上起こると、生活に少なからず影響します。治療は薬物治療が原則となります。適切な服薬により7割の人が通常の生活を送ることができますが3割程度は発作のコントロールが困難な難治てんかんとなります。
服薬は20種類近くある薬から1~2種類の服用で7割程度は発作がおさまり、通常の生活ができます。薬を長期にわたって服用することになる為、当然のことながら副作用の可能性も十分に考慮します。
比較的最近の新規抗てんかん薬により処方の選択肢がより一層増えました。仮に薬が3剤以上であっても発作の頻度は変わらないというデータがあります。そこで難治てんかんの場合は手術によって発作をおさえるという方法を考えます。
発作がおさまらない場合は早めに受診することをおすすめします。
脳波検査は過剰な放電を確認できる最も大切な検査です。てんかんの場合、鋭くとがった波が表れます。
当院ではビデオ脳波(24時間継続の為入院が必要です)にてより診断制度が高い検査が可能です。
脳にてんかんの原因となる病変がないか画像検査で調べます。MRIは解像度が高くごく小さな病変も発見することができます。
脳の機能を調べる検査です。主に言語機能と記憶機能について、右脳と左脳のどちらの関わりが強いかを判断する検査です。
発作が起きると脳の糖が多量使われます。この糖の利用を検査するのがPETです。
PET検査は他院への紹介となります。
てんかんが認知症の原因になる事が分かっており、なおのこと治療が大切です。その他、運転の問題、福祉制度の問題などからも、より専門性の高い診療体制が必要です。てんかんは早い段階で診断・治療を始めると発作が早くおさまり、安心して生活することが期待できます。
当院では服薬でコントロール可能な患者様はもちろん手術の必要な難治てんかんまで幅広く診療しています。
診療科・部門