腰痛は世界中で多くの人がかかえる身体の不調であり、日本人の実に83%もの人が生涯に一度は悩まされているとされています。2019年の厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、腰痛は男性で1位、女性で2位の身体の自覚症状となっています。2019年以前の国民生活基礎調査の結果も同様の傾向となっており、腰痛がいかに身近な身体の不調かがおわかりいただけると思います。腰痛は明確な原因(椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎圧迫骨折など)がある特異的腰痛と呼ばれるものが15%、明確な原因がない非特異的腰痛と呼ばれるものが85%とされています。今回は腰痛の大多数を占める非特異的腰痛について主に述べていきたいと思います。
特異的腰痛は医師の診察や画像検査(X線、MRIなど)で原因が特定できるもの、非特異的腰痛は「原因の特定が困難なもの」と定義されます。言い換えると、特異的腰痛は骨折などの原因によって骨や神経に異常をきたしている状態、非特異的腰痛は骨や神経に明確な異常をきたしていない状態と言えます。
非特異的腰痛は身体的要因(物の持ち上げ動作などの身体に負担がかかる要因)、心理社会的要因(疲労や心理面の要因など)、またはその両者によって引き起こされるとされ、各個人によって対応(検査方法、治療方法)が異なってきます。身体的要因と心理社会的要因の中でも複数の要素が関係(例:腰への負担、社会的ストレス、睡眠不足など)して腰痛に繋がっている場合も多く、明確なきっかけがなくても腰痛を発症することもあります。初めて腰痛に罹患する人の多くは短期的に改善するとされていますが、一度腰痛に罹患した人は再発しやすいと言われています。腰痛を発症するリスクとしては重量物を持ち上げる行為、持ち上げる回数が多いこと、喫煙、肥満、うつ症状が挙げられています。各個人によって身体的、心理的、社会的な特徴は様々であり、持ち合わせている問題が個々で異なるため、対応が異なるということも納得ができます。
腰痛への対処は個々で対応が異なり、「腰痛にはこれをやっておけば良い」といった決まったものはありませんが、短期的・長期的にも比較的効果的なものとしては身体活動量の維持と運動が挙げられます。マッサージなどの「徒手療法」と呼ばれるものや電気治療、温熱治療などの「物理療法」と呼ばれるものは単独での効果は明確な科学的根拠は乏しいとされていますが、運動と組み合わせることで治療効果が増すとされています。当院では運動療法(筋力トレーニングやストレッチなど)、物理療法(電気治療、温熱治療)、自主トレーニング指導を主軸に各個人にあわせたリハビリテーションメニューを提供するよう努めています。
腰痛を生じる疾患の中には腫瘍や脊椎の感染、骨折、脊髄の神経(馬尾)の問題などの重篤な疾患もあります。いかなる時も痛みが治まらないような強度な腰痛や、腰痛以外にも身体の不調(急激な体重の減少、食欲不振、排泄の問題など)が併存している時には早期の受診、検査をすることをおすすめします。
当院、リハビリテーションスタッフがご相談をお受けいたします。